はじめに
「このサイズで“ランクル”を名乗るのか」――そんな驚きとともに登場した、トヨタの新型モデル、ランドクルーザーFJ。フルサイズSUVとして長年君臨してきたランドクルーザーシリーズにおいて、これまでのスケール感とは一線を画した“エントリー的”な位置づけながらも、本格的なオフロード性能と信頼性を備えているという点で、クルマ好きのみならずSUV購入を検討する一般層にも大いに注目されています。
この記事では、2026年7月(予定)日本発売となるこの新型車の、エクステリア・インテリア・サイズ・パワートレイン・安全装備・ライバル比較など、多角的に掘り下げていきます。購入検討のポイントから維持費・リセールバリューまで、できるだけ詳しくまとめてみましたので、ぜひ選択肢のひとつとして参考にしていただければと思います。
外観(エクステリア)
新型ランドクルーザーFJのエクステリアは、「スクエアなキャビン」「張り出したフェンダー」「力強いバンパー」というランドクルーザーらしい造りを受け継ぎながらも、より都市でも使いやすく、かつアウトドアでも似合う“角ばった”デザインが特徴です。

具体的には、次のようなポイントがあります:
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ボディ形状を「サイコロをモチーフとした直方体ボディと角をそぎ落とした面取り構成」で設計。角張りつつも無駄を抑えた“塊感”を演出。
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フロントには押し出し感の強いバンパー、張り出したフェンダー、最新LEDヘッドライトを組み合わせ。
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リアもルーフを水平に保ち、垂直なバックドアを採用。荷室アクセス性や積載性を意識。
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バンパー周り、特にコーナーバンパー部分は 取り外し可能な分割タイプ。修理・交換を効率化し、アウトドア使用やカスタム仕様にも対応。
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丸目型ヘッドランプをカスタム仕様で設定するなど、往年のランクルテイストを残しつつ、現代のデザイン言語を融合しています。
このように「本格SUVらしいタフ感」を、取り回しやすさや屋内・街中使用の取り回しという観点でバランスさせているのが大きな特徴です。街中での扱いやすさを意識しつつ、アウトドア・悪路へ出かける“遊びの相棒”としても映えるデザインです。
内装(インテリア)
内装にも“ランクルらしさ”と“現代SUVとしての使い勝手”の両立が図られています。
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インストルメントパネルは水平基調で、視線移動を少なくするレイアウト。運転席から各種モニター・スイッチ類までの距離・視線が最適化されています。

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カウル(ダッシュ上面)を低く設計しており、悪路での視界確保も意識。ベルトラインも低めに取って、路面感を掴みやすくしています。
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デジタルメーター・インフォテインメントシステムを採用し、最新の機能性を確保。用途に応じてアウトドア用の荷室アレンジも想定されており、後席でも快適な室内空間が確保されている設計になっています。
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操作系・スイッチ類・シフトノブに至るまで“直感的な操作”を可能にする構成。街中・高速・山道と変化する走行シーンにも配慮されています。
内装において、普段使いの快適性と悪路対応のタフさを両立させるレイアウトが好印象です。特に「視界・操作性・積載性」の3点がしっかり押さえられており、運転・同乗ともに安心感があります。
ボディサイズの現行型との比較
新型ランドクルーザーFJは、シリーズ中でも最も“扱いやすいサイズ”に設計されています。プロトタイプ公表値を基に、現行型/従来モデルと比較してその意図を整理します。
新型FJ サイズ
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全長:4,575 mm
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全幅:1,855 mm
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全高:1,960 mm
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ホイールベース:2,580 mm
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最小回転半径:5.5 m(報道値)
比較対象例:ランドクルーザー250(現行シリーズ中核モデル)
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全長:4,925 mm
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全幅:1,980 mm(最大)
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ホイールベース:2,850 mm
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最小回転半径:6.0 m(参考値)
解説
この比較から分かるのは、新型FJが “ひと回り以上コンパクト” に仕立てられている点です。ホイールベースで270 mm短縮、全長・全幅も縮められ、街中やオフロードともに取り回しの良さを重視して設計されていることが明らかです。さらに全高を1,960 mmと設定しているため、室内高・視界(特に悪路下りなどでの“見下ろし感”)も高めており、タフな雰囲気と利便性の両立を図っています。
このボディサイズ設定により、従来の“巨大なランドクルーザー”というイメージから脱却しつつも、シリーズ伝統の“悪路を走りきる”構造・剛性感を保つというバランスを狙っていることが見て取れます。
パワートレインとスペック
新型FJのパワートレインには、信頼性・整備性に定評のある2.7L直列4気筒ガソリンエンジンが採用されました。以下が主要スペックです。
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エンジン型式:2TR-FE型 2.7 L 直列4気筒ガソリン
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最高出力:120 kW(163 PS)
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最大トルク:246 N·m
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トランスミッション:6速AT(6 Super ECT)
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駆動方式:パートタイム4WD(H2/H4/L4切替)
解説ポイント
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シリーズで多用されてきた2.7 Lユニットを採用することで、グローバル展開時・アフリカ・アジア地域などでの整備性・部品供給性を確保。
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車重が予想より軽く抑えられており(公式数値未公表ですが ~2,040 kg 程度と推測)、「同出力ながら軽快感」を狙った設計とも言われています
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本格4WDシステム(2速発進モード・ヒルディセントコントロール・リアデフロック)などを備え、オンロード・オフロード両面での走破性を意識。
このように、「ランクルらしい信頼性・耐久性を担保しつつ、取り回しやすさ・軽快感を両立する」ことを目指したパワートレイン構成となっています。ガソリン仕様のみの設定という点も、メンテナンス性や世界展開を意図したものと考えられます。
安全装備について
安全装備面でも、新型FJでは最新トヨタの予防安全技術が搭載され、日常・レジャー両方で安心できる仕様となっています。主な装備は以下の通りです(現時点で発表されている情報に基づく):
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予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を採用。
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プリクラッシュセーフティ(昼間の自転車・夜間の歩行者検知含む)。
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レーダークルーズコントロール(前方車両との車間を保つ)。
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車線維持支援「レーントレーシングアシスト(LTA)」。
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ロードサインアシスト(RSA):交通標識をメーター内表示。
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リヤクロストラフィックアラート(RCTA):後退時の左右後方接近車両を検知。
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ブラインドスポットモニター(BSM):死角・側後方から急接近車両をドアミラーLEDで警告。
さらに、車両構造・剛性設計にも配慮されており、フレーム構造・高剛性ボディ・床下ブレース追加などで、走破性・安全性・安心感を高める設計がなされています。
安全装備だけでなく、悪路での安心走行を支える構造設計まで含め、「オン/オフ兼用本格SUV」としての信頼感が伝わってきます。
燃費
燃費についても公表されており、新型FJは同シリーズ中では取り回しの良さや車体縮小を活かして、燃費性能を向上させています。公表値は以下:
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2.7 Lガソリンモデル:13 km/L(JC08・WLTC詳細未記載)
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参考値:ランドクルーザー250における2.7 Lガソリンモデル:7.5 km/L(同条件)
解説
従来の重厚なランドクルーザーと比べて、かなりの燃費改善が図られている点が注目されます。例えば、ランドクルーザー250が“7.5 km/L”とされていたのに対し、新型FJでは“13 km/L”とほぼ2倍近い数値となっています。ボディサイズの縮小・車重低減・効率的なパワートレインの組み合わせがこの向上に寄与していると思われます。
もちろん「13 km/L」が実走行でも同等に出るわけではありませんが、SUVとして使いやすい取り回し・燃費のバランスが取られているという点で好材料です。
各グレードごとの販売価格は?
現時点で公表されている価格情報をもとに整理します。なお、正式なグレード別価格・装備内容は今後発表される可能性があります。
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スタート価格:約 400万円~ の見込み。
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「~400万円台前半」であれば、従来のランドクルーザーシリーズよりも手が届きやすい価格帯と言えるでしょう。上位モデルとなるランドクルーザー250は、520万円~という価格帯が参考となっています。
ただし、グローバル展開・オプション装備・輸入仕様・税金・装備レベルなどにより、国内価格では若干の変動が出る可能性があります。特に日本仕様では装備の違いや輸送コストが反映されることもあるため、実際の価格発表を待ちたいところです。
販売予定時期は?
新型FJの発表・発売スケジュールも明らかになっています。以下が主なポイントです。
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ワールドプレミア:2025年10月21日(世界初公開)
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日本発売予定:2026年7月頃 ~
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生産地:タイ(「IMVシリーズ」の生産国のひとつ)で生産され、グローバルモデルとして供給される予定。
このように、発表から発売まで比較的期間があるため、先行予約・キャンセル待ち・納期などが重要な検討要素になるでしょう。また、国内導入で仕様・グレード・装備がローカル化される可能性もあるため、情報収集が鍵となります。
ライバル車との比較(優っている点)
新型ランドクルーザーFJがターゲットとするセグメントには、他社の中型SUVやクロスカントリー志向の車種が挙げられます。ここでは、代表的なライバル車と比較しながら、FJが「優っている点」を整理します。
ライバル例
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トヨタ RAV4:都市派クロスオーバーSUV。
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スバル フォレスター:全天候・悪路対応力を備えたSUV。
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ジープ ラングラー(輸入車):本格オフロード志向強。
FJが優っていると考えられる点
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ブランド・伝統:ランドクルーザーという“本格クロスカントリーSUV”ブランドを継承。単なる“SUVライク”ではなく、悪路対応・耐久性がシリーズ設計思想として根付いている点。
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4WD/本格オフロード装備:パートタイム4WD・リアデフロック・2速発進モード・ヒルディセントコントロールなど、オフロード対応力が強化されている点(ライバルの多くでは2WDまたは比較的ソフトな4WD) 。
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取り回し・サイズのバランス:一般的なランドクルーザーより大幅に縮められたサイズ(全長4,575 mm・ホイールベース2,580 mm)で、街中・郊外・アウトドアの両立を狙える点。都市部でも扱いやすい。
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燃費の改善:従来型ランドクルーザー比で燃費13 km/Lという改善値を示しており、普段使い・レジャー使い両方での費用メリットが出やすい。
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カスタム性・修理性:バンパーの分割交換可能設計や丸目ヘッドランプカスタム仕様など、“遊びの幅”を残した仕様。ライバルにはここまで“本格カスタム+本格SUV”を両立しているモデルは少ない。
以上から、FJは「クロスオーバーSUVとは一線を画す、本格SUVのエントリー版」という位置づけで、都市/郊外/オフロードを含む幅広い用途で優位性を持つ可能性があります。
歴代モデルとの比較
ランドクルーザーシリーズの歴史を振り返ると、初代登場から「どこへでも行けて生きて帰れる」ことを掲げてきました。新型FJはそのDNAを継承しつつ、“より広く楽しむ”姿勢を加えたモデルと言えます。以下、簡単に比較します。
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初代(BJ・FJ型):1954年登場。ジープ系の影響を受けたラダーフレーム、直列6気筒ガソリンエンジン搭載。悪路強度・信頼性重視。
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40系〜100系:シリーズはオフロード性能・耐久性を追求しながら、徐々に乗用性・快適性を高めてきました。例えば80系では独立懸架導入、100系では車高調整式サスペンションなど。
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250シリーズ:2024年登場。質実剛健・原点回帰を掲げ、“毎日使えるランドクルーザー”という位置づけ。
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新型FJ:さらに“手が届きやすく・扱いやすく”という視点を加えた新たなライン。
比較して見えてくること
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歴代モデルは「圧倒的な悪路走破・耐久性」重視で、サイズ・価格とも“手が届きにくい”側面もありました。
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新型FJはその構成を薄めるのではなく、維持しつつ、“サイズ・燃費・価格のハードルを下げて普及を狙う”方向。
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シリーズで“最小”のランドクルーザーという位置づけとなるため、よりライトにランクル体験をしたいユーザーには魅力的な選択肢です。
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また、カスタム性を持たせた設計(丸目ヘッド・バンパー分割交換)で、歴代の“遊び/改造”文化も受け継いでいます。
このように、歴代ランドクルーザーとの比較で言えば、「重厚なクロスカントリーSUV」から「より広く楽しめるタフSUV」への進化を象徴するモデルと言えるでしょう。
年間維持費
購入後に注意したいのが、実際にかかる維持費。新型FJでは燃費改善などのメリットがある一方、SUVらしい税金・保険・消耗品・駐車場費用なども考慮する必要があります。ここでは概算として一般的な項目を整理します(日本国内・5年間使用を想定・目安としてご覧ください)。
主な維持費項目
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自動車税:排気量2.7 Lクラスであれば、年額数万円(5 000 cc未満クラス)+重量税・車検等も必要。
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自動車重量税・車検費用:車重が比較的重めになることが想定され、車検時にかかる金額も大型SUV並みの可能性あり。
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燃料費:仮に年間1万km走行、燃料単価160円/L、燃費13 km/Lとして計算 →約12万3千円/年。
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タイヤ・ブレーキ・サスペンション等消耗品:オフロード仕様・SUV重量級車としてタイヤ交換が早まる可能性あり。年あたり数万円~数十万円。
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保険料(任意保険)・駐車場代・洗車・メンテナンス:都市部で駐車場を借りるなら月額1万円以上の地域もあり。これらを含めると年間維持費は20万円~30万円超も想定されます。
5年間使用例の概算
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自動車税+重量税+車検費用:5年で10万円~20万円
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燃料費:12.3万円×5=約61.5万円
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消耗品・メンテナンス+保険+駐車場:5年で約50万~100万円(条件による)
→ 総合で5年使用で70万円~180万円程度のレンジが想定されます。
このように、“購入価格だけ”でなく“維持費”を踏まえて選ぶ必要があります。特に都市部で駐車場料金や保険料が高い地域では、維持費が大きな負担になる可能性があります。
リセールバリュー
リセールバリュー(売却時の価値)も車選びでは重要な指標です。ランドクルーザーシリーズは、ブランド力・耐久性・オフロード性能などから、中古車市場でも根強い人気を持っています。新型FJについては「シリーズ最小モデル」「取り回し重視」という新しい方向性ですが、次のような観点からリセール面も期待できると考えられます。
リセール面で有利な要素
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ランドクルーザーという名前だけで価値が高められてきた実績あり。
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サイズ・燃費・価格帯を抑えてきたことで“使いやすいランクル”として需要が拡大する可能性あり。
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カスタム性・アウトドア志向が強いため、個性を出した仕様車・限定モデルなどはプレミア付きやすい傾向。
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車両構造・4WD・悪路走破性能を備えている点が“中古でも安心して使える車”という評価につながる。
注意すべき点
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初期モデル・発売直後は価格が高めに設定されることが多く、値落ち幅が大きくなるケースも。
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予想される台数が多い・普及モデル化すると“希少性”が低くなり、リセール優位性が薄まる可能性。
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燃費改善・代替技術(EV・ハイブリッド)が進むとガソリンエンジン車の性能価値が相対的に下がる可能性も。
総じて、新型ランドクルーザーFJはリセールバリュー面でも「期待できるモデル」であると評価できる一方、これらの注意点も頭に入れておくと、買ってから「思ったほど値が落ちない」可能性を高めることにつながります。
購入検討のポイント
新型FJを検討するうえで、押さえておきたいポイントを整理します。購入前に“自分の用途・ライフスタイル”に照らして確認しましょう。
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用途の明確化:街乗り・郊外・アウトドア、どの用途がメインか。FJは“タフSUV”でありながら取り回しが良い設計。アウトドア利用が多ければ魅力が高い。
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駐車場・駐車スペースの確保:全幅1,855 mm・全長4,575 mmと“コンパクト”とはいえ都市部では依然サイズ感があります。駐車場スペース・取り回し・出入口幅を事前確認。
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維持費の試算:燃料・タイヤ・保険・駐車場代などを含めたトータルコストを想定。ライフスタイルに応じた年間走行距離も考慮。
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グレード・装備の選定:どこまで本格オフロード仕様が必要か。丸目ヘッドランプ仕様・カスタム仕様・標準モデルの違いを理解。
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納期・発売時期のチェック:2026年7月発売予定とはいえ、初期モデルは人気集中で納期が長くなる可能性あり。早期予約・発表仕様を見極める。
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保険・税金・将来価値:ランドクルーザーというブランド価値を活かせる仕様にしておけば、将来売却時にも優位性が出る可能性あり。
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ライバルとの比較検討:他社SUV、クロスオーバー車、ミドルSUVを候補に入れたうえで「なぜFJを選ぶか」の理由を明確に。
これらポイントを頭に入れつつ、展示車・試乗車が登場したら実車を確認し、視界・乗降性・荷室・操作感などを体感することをおすすめします。
まとめ
新型ランドクルーザーFJは、ランドクルーザーらしい“タフさ・走破性・信頼性”を受け継ぎながら、サイズ・価格・燃費・取り回しといった普段使いのハードルを下げ、“誰でも扱えるランドクルーザー”という新しい位置づけを確立しようとしています。
そのため、「アウトドアも街乗りも楽しみたい」「ランクルブランドを持ちたいが巨大サイズ・燃費が気になる」といったユーザーには非常に魅力的な選択肢です。発売は2026年7月頃、価格帯も400万円前後という報道もあります。ライバルの多いSUV市場の中で「本格4WD・ランドクルーザー」の冠を持つこのモデルがどのように受け入れられるか、注目が集まります。
購入を検討される方は、用途・維持費・納期・グレードを早めに整理し、発表情報・展示実車の確認を待つことを強くおすすめします。歴史あるランドクルーザーの最新モデルとして、“選んで後悔しない1台”をぜひ見極めてください。



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