『あんのこと』視聴レビュー

日本映画

映画『あんのこと』視聴レビュー

1. 作品情報

  • タイトル:あんのこと / Anno no Koto

  • 公開年/上映時間:2024年/135分

  • 制作会社:スターサンズ、朝日新聞社

  • 監督・脚本:入江悠(監督)、港岳彦(脚本)

  • キャスト:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎

  • ジャンル:社会派ヒューマンドラマ、人間ドラマ、現代劇

入江悠監督が手がける本作は、実在の出来事をモチーフにしながらも、普遍的な人間ドラマとして描かれています。主演を務める河合優実は、演技派若手女優として近年注目されており、その存在感がスクリーンで圧倒的に光ります。

2. あらすじ(ネタバレあり)

世界観・舞台設定

舞台は現代の東京。高層ビルと下町が交差する都市の片隅で、見過ごされがちな若者たちが生きています。物語は、社会から孤立し、自暴自棄になっていた少女・杏の視点で進みます。

主人公・メインキャラ

  • 杏(河合優実):幼少期から虐待を受け、施設や病院を転々としながらも、心の奥底に”生きたい”という小さな願いを持つ少女。

  • 菊地(佐藤二朗):彼女を警察としてではなく、一人の人間として見つめ、保護しようとする熱血刑事。

  • 矢野(稲垣吾郎):更生施設の所長。過去に同じような若者を救えなかった経験があり、杏にその影を重ねていく。

大まかなストーリー

杏はある日、公園で倒れているところを保護される。自傷行為や薬物依存が原因で、警察の保護下に置かれる中、彼女に向き合おうとする菊地と出会う。最初は拒絶する杏だが、施設で矢野や仲間たちと接する中で、少しずつ心を開いていく。しかし、社会の冷たさや過去のトラウマが再び彼女を追い詰め、杏は苦悩と葛藤の中でもがきながら、生きる意味を探し続ける。

3. 映画の魅力

映像美・演出の巧みさ

画面全体に漂う“静けさ”が特徴的。監督の入江悠は、あえて説明的なセリフを排除し、視線や間、沈黙で感情を語らせる演出を貫いています。照明や構図も計算され尽くしており、杏の孤独や閉塞感が画面越しに伝わってきます。

キャラクターデザイン・背景美術

東京の雑踏から、施設内の無機質な空間まで、その背景はまるで登場人物の心象風景のようです。汚れた壁、壊れかけた自販機、使い古された毛布など、細部の描写が徹底されていて、作品世界への没入感が高いです。

表情・動きの演技

演出は一見淡白ですが、その分、俳優たちの演技に大きく依存しています。杏が言葉にならない感情を抱える場面で見せる微細な表情や、力なく肩を落とす所作は、見る者の心を強く揺さぶります。

4. 音楽・主題歌・声優の演技

サウンドトラック

音楽は全体的に控えめ。ピアノの旋律や環境音を生かしたサウンドデザインが施され、リアリティと没入感を損なわないよう工夫されています。劇伴は“聞かせる”というより“感じさせる”ものです。

主題歌

主題歌「灯(ともしび)」はAimerが歌い上げる渾身の一曲。杏の人生に寄り添うような歌詞と、切なさと力強さが同居する旋律が、エンドロールをより感動的なものにしています。

演技の妙

河合優実の演技は、もはや“演技”という枠を超えて、杏という人物そのものに見えます。彼女の目線や、言葉にしない沈黙の時間が物語の核となっています。佐藤二朗も普段のコミカルな役柄から一転、真剣かつ繊細な演技を披露し、物語の重厚さを支えています。

5. 感想・個人的レビュー

杏が初めて「ありがとう」とつぶやくシーンは、物語全体のハイライトとも言える場面です。過去の傷に囚われながらも、人と人とのつながりに一筋の光を見る瞬間は、観ているこちらの心も救われるような感覚を覚えました。

また、作品全体に流れる“諦めない心”のメッセージには深く共感しました。たとえ人生がどんなに壊れていても、誰かの一言、ほんの少しの手助けで希望の芽が芽吹く——そんな真理が、静かに、しかし確実に語られています。

6. オススメ度・評価

項目 評価
ストーリー ★★★★★
映像美 ★★★★★
音楽 ★★★★☆
演技 ★★★★★
感情表現 ★★★★★
  • 映画初心者でも引き込まれる構成とテーマ。

  • ただし重いテーマを含むため、感情の起伏が大きい作品が苦手な方は注意が必要です。

  • 思春期以降の若者から大人まで、幅広い年齢層に響く内容。

7. こんな人におすすめ

  • 社会問題に関心のある人

  • 『万引き家族』『誰も知らない』『ミッドナイトスワン』のような作品が好きな人

  • 一人の人間の変化や成長を丁寧に追う物語に魅力を感じる人

8. 豆知識・裏話

  • 主演の河合優実は、撮影前に実際のリハビリ施設で過ごした少女たちの話を聞き、体験に基づく役作りをしたそうです。

  • 原案となった記事は、2020年代初頭に朝日新聞が掲載したある少女のドキュメンタリー記事。

  • 青い鳥のモチーフは、「どこにもいないけど、いつもそばにいる希望」という意味が込められていると監督がコメント。

9. ネタバレあり感想・考察

物語のラスト、杏が空を見上げて微笑むカットは、その後の彼女の人生を肯定的に描いているようにも、一瞬の安らぎにすぎないようにも取れます。まさに観客に委ねられた結末です。

また、序盤に登場した青い鳥のオブジェが、終盤で彼女の部屋に飾られている描写があることに気づいた方も多いでしょう。これは、杏がようやく”居場所”を見つけたことを象徴しているのかもしれません。

矢野所長のセリフ「救えなかった子の分まで、君を守りたい」は、社会の仕組みと個人の想いのギャップを示すと同時に、私たち一人ひとりにできることを問いかけてきます。

10. 視聴方法(配信情報)

  • 2024年6月時点で全国劇場公開中。

  • 秋以降、Netflixでの配信が決定。特典映像・インタビュー付きBlu-rayも同年11月に発売予定。

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まとめ

映画『あんのこと』は、現代社会に生きる私たち一人ひとりに問いかける、心を揺さぶる作品です。華やかなエンタメ作品とは一線を画し、静かに、しかし確実に観客の胸を打ちます。

“生きる”ことの意味、“救う”という行為の難しさ、そして“再生”の希望それらすべてがこの作品に込められています。ぜひ心して観ていただきたい一作です。

 

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